第1回 経済指標の基礎知識
T.景気を見る指標
(1)国内総生産(GDP)
@ 国内総生産(GDP)とは
国内総生産は英語のGross Domestic Productを略してGDPと呼んでいます。 これは、簡単に言えば、1年間に日本国内で生産した量の合計です。 しかし、一概に「生産量」といっても、日本国内で作っている色々なものは単位が違うので、量のままでは合計できません。 したがって、いったん金額に直して、何円分を生産したかを合計していきます。 このように生産した金額の合計である日本のGDPは約500兆円です。 これは、日本国内で、1年間に500兆円分の財やサービスを生産していることになります。
このGDPには、国内で生産したものの金額を単純に合計した名目GDPと、物価水準の変化を取り除いた実質GDPがあります。
名目GDPとは、新たに生産した金額を足し合わせれば求まるのですが、これには、問題があります。 なぜなら、GDPは一国の生産量を知りたいのですが、名目GDPのままだと、物価が変動すると、正確に生産量を表さなくなるからです。たとえば、1国内での生産量は変わらないのに、すべての物の価格が2倍になり、物価が2倍になったとしましょう。 すると、生産量は変わっていないのに、生産をした金額は、物の価格がすべて2倍になっているので、やはり2倍となり、名目GDPは2倍となります。
そこで、そのような物価変動の影響を取り除いて1国内の生産量を表す指標が実質GDPです。 先の例では、物価が2倍になっているのだから,名目GDPが2倍になっても、それは、生産量の増加ではなく、物価上昇によるものだとわかります。 つまり、生産量=実質GDPは以前と変わらないということになります。 実質GDP=名目GDP/物価、という関係になります。 なお、GDPの計算の際の物価指数をGDPデフレータといいます。
通常,GDP統計が発表され、何%プラス成長とか議論されるのは、実質GDPです。 なぜならば、本当の生産量を表しているのは、実質GDPだからです。 ちなみに2005年の日本の名目GDPは502.9兆円、実質GDPは538.9兆円でした。
一昔前までは、国の経済活動を判断する上で国民総生産(GNP=Gross National Product)が有益な指標と考えられてきましたが、1980年代頃から日本も国際化が進み、「外国に住む国民の生産量も含んでおり、本来の国の生産量を正確に計ることができない」という理由から、国内総生産(GDP)という概念が主流になりました。
A 国内総生産(GDP)と景気
次に、実質GDPと景気がどのように関係するかについてです。
実質GDPが増加するとは、日本国内での生産量が増加するということです。 すると、企業はたくさん生産するために人を雇うようになり、失業は減少します。 また、企業はたくさん生産するので、やがて、従業員の給料も上がっていきます。 従業員の給料が上がれば、消費が増えて企業の注文が増える結果、さらに生産量である実質GDPは増加します。 また、生産量が増加すれば、企業は設備投資を行い生産力の拡大を図ります。 設備投資は、機械メーカーの注文の増加となり、更に生産量は増加します。
以上のように、実質GDPが増加すると、どんどん好循環が続き、景気は良くなっていく仕組みがあります。 これが、景気回復のメカニズムです。 日本経済はバブル崩壊後、早くこのような状態に戻ることが望まれてきました。
B経済成長率
経済成長率は、GDP成長率(GDPの前年度比や四半期ごとの前年同期比)で表されます。 GDP成長率にも「名目GDP成長率」と「実質GDP成長率」が有りますが、通常、経済成長率は実質GDP成長率で判断されます。
★日本の国内総生産(GDP)は、内閣府が新SNA(System of National Accounts、国民経済計算)方式に基づいて四半期ごとに調査・公表しています。 内閣府の四半期別GDP速報は当サイトのLINKのページからもアクセスすることができます。
(2)景気動向指数(DI ; Diffusion Index)
@景気動向指数(DI)とは
景気動向指数(DI)とは、景気が上向きか下向きかを総合的に示す指数で、生産、在庫、有効求人倍率、百貨店販売額などの
経済指標の中から、景気を敏感に映し出す29の指標を選び出し、
3ヵ月前と比較して上昇を示している指標数の割合(%)で表します。 これにより、景気の現状把握や将来予測、さらには景気の転換点(景気の山・谷)の判定に用います。
A採用指標
採用される経済指標は、(1)景気に先行して動く
先行系列(在庫率や新規求人数など12の指標)、(2)景気と一致して動く
一致系列(生産指数や営業利益など11の指標)、(3)景気に遅れて動く
遅行系列(在庫指数や家計消費支出など6の指標)の三系列に分類されます。
B景気動向指数(DI)の算出方法
先行系列、一致系列および遅行系列の各指標を3ヵ月前と比較して、増加した時には+を、横ばいの時には0を、減少した時には−をつけます。 その上で、先行、一致、遅行の各系列ごとに、以下の計算式により算出します。
プラス指標の数x1+ゼロ指標の数x0.1
景気動向指数(DI)=―――――――――――――――――×100(%)
採用指標の数
(注)未発表の指標がある場合は、採用指標数に含まずに計算する。
C景気動向指数(DI)の読み方
一般的に、景気判断は景気動向指数(DIの)
一致指数を用いて、「50%ライン」を基準に行われます。
一致指数が
3カ月連続で50%を上回ると、景気拡大局面(拡張期)、逆に
3カ月連続で下回ると、景気は後退局面(後退期)にあるといわれます。 また一致指数が
50%を上から下に切る時点を「景気の山」、逆に
3カ月連続で50%を下から上に切る時点を「景気の谷」といいます。 ただし、最終的な景気判断は、その他の主要な経済指標や専門家の意見を勘案して行われます。
なお、景気動向指数(DI)は、その算出方法から、あくまでも景気の方向性を示すものであり、いわゆる景気が良いとか悪いとかいった景気の強さ(度合い)を示すものではありません。
★景気動向指数(DI)も
内閣府が毎月、調査・公表しています。
(3)企業短期経済観測調査(日銀短観)
@企業短期経済観測調査(日銀短観)とは
企業短期経済観測調査(日銀短観)とは、企業経営者を対象に自社の現況や先行きの見通しについて行う調査であり、
日本銀行が
四半期ごとに
調査・公表しています。
A業況判断DI
日銀短観で最も注目度が高いのが、
業況判断DIです。 業況判断DIは、調査対象企業に現況や先行きの見通しを「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つの段階で尋ね、「良い」を選択した企業の割合から「悪い」を選択した企業の割合を差し引いて算出します。
<計算式> 業況判断DI(%ポイント)=「良い」を選択した企業の割合−「悪い」を選択した企業の割合
<計算例>
| 回答社数 | 回答社数構成百分比 |
| 「良い」を選択した企業 | 30社 | 25%
|
| 「さほど良くない」を選択した企業 | 72社 | 60% |
| 「悪い」を選択した企業 | 18社 | 15% |
| 合 計 | 120社 | 100% |
この場合、「業況判断DI(%ポイント)=25%−15%=10%ポイント」となります。
たとえば、前回の調査の業況判断DIが−2%ポイント、今回の業況判断DIが10%ポイントになった場合、「前回と比べて12%ポイント改善した。」といった表現になります。 業況判断DIの回答率はほぼ100%に近く、速報性にも優れています。
★日本銀行のサイトへは
当サイトのLINKのページからアクセスできます。
U.物価を見る指標
(1)企業物価指数(Corporate Goods Price Index,CGPI)
@企業物価指数(CGPI)とは
企業物価指数(CGPI)は、
企業で取引される商品の価格に焦点を当てた物価指数であり、
日本銀行が
毎月、調査・公表しています。 企業物価指数の主な目的は、商品の需給動向を敏感に反映する取引価格の動向を調査し、、マクロ経済を分析するための重要な材料を提供することにあります。 従来の卸売り物価指数と比べ生産者段階での調査割合が増えたことから、2003年1月に名称が変更されました。(ただし、指数の基準時およびウエイト算定年次は2000年です。)
A基本分類指数
企業物価指数には、商品の属性によって採用品目に分類した3つの基本分類指数があります。
| 国内企業物価指数 | :国内市場向け国内生産品の企業間における取引価格を統計 |
| 輸出物価指数 | :輸出品が日本から積み出される段階の価格を統計 |
| 輸入物価指数 | :輸入品が日本に入着する段階の価格を統計 |
また、この他に分析ニーズなどに配慮して基本分類指数を組みかえたり、調整を加えた
「参考指数」があります。
(2)消費者物価指数(Consumer Price Index,CPI)
@消費者物価指数(CPI)とは
消費者物価指数は、
全国の世帯が購入する商品やサービスの価格の動きを指数化したものであり、
総務省が
毎月、調査・公表しています。 消費者物価指数は、対象となる品目すべてを購入するのに必要な費用が基準年(2000年)に比べてどの程度変化しているかを表しています。
A採用品目
指数計算に採用する品目は、世帯が購入する多数の財およびサービス全体の物価変動を代表できるように、(1)家系の消費支出の中で重要度が高いこと、(2)価格変動の面で代表性があること、(3)継続的に調査ができること、などの観点から選定した594品目に持ち家の帰属家賃4品目を加えた598品目です。
なお、一般的に消費者物価指数は、企業物価指数と比べ、変動率が小さいといわれています。
(3)マネーサプライ(通貨供給量)
@マネーサプライとは
マネーサプライとは、
経済全体に供給されている通貨の総量です。
具体的には、一般法人や個人、地方公共団体などが保有する現金通貨や預金通貨などを集計したものです。 ただし、
銀行や保険会社などの金融機関や中央政府が保有する通貨は含まれません。
A通貨の分類と定義
M1:現金通貨(紙幣および硬貨)と預金通貨(当座預金・普通預金・貯蓄預金など)の合計
M2:M1と準通貨(定期預金・据置貯金・定期積金など)の合計
M3:M2と郵便局・農協・信用組合などの預貯金や金銭信託の合計
CD:譲渡性預金(第三者に譲渡できる定期預金で、自由に発行条件を定めることができる預金)
Bマネーサプライの代表的な指標
日本銀行では、「M1」「M2+CD」「M3+CD}「広義流動性(M2+CDに郵便貯金、国債、金融債、信託などを加算したもの)」の4つの指標をマネーサプライ統計として
毎月、作成し公表しています。 このなかで
「M2+CD」が、実体経済や物価との関係が相対的に安定的であるとされており、最も注目度が高い数値です。
Cマネーサプライと物価
マネーサプライは、世の中のお金の量ですから、経済活動の大きさに応じて伸び縮みします。 取引されるモノやサービスに対して、お金の量が増えすぎると、物価が急激に上がる現象(=
インフレ)を引き起こし、逆に、お金の量が減りすぎると、モノが余ってしまって物価が下がる現象(=
デフレ)に陥ります。 インフレに向かうか、デフレに向かうかは、お金とモノのバランスがどちらに偏っているかで決まります。
★マネーサプライについては「金融政策」のところでさらに詳しく解説します。
<おわり>
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